vol.73 インフレを改めて勉強しよう!
ジワジワと家計を襲う値上げの波
「モノの価格の動きをどうやって知る事ができるの?」
三男はどうやらインフレに興味を示している様子です。
「実はね、日本も含め世界各国政府が自国のモノの価格の動き方を変動率として毎月発表しているんだよ。消費者物価指数(CPI: Consumer Price Index)と言って、父さんたち金融に携わる人たちだけではなくて、投資家、実業家、企業経営者、企業勤務者、学者などたくさんの人たちがこの数値を基に物価の動きを判断しているんだ。それに世の中で使われているお金の管理をしている日本銀行は、特にこの物価の動きを注視していて、毎年少しずつモノの価格が2%程度上がることを期待して、世の中に供給するお金の量と貸し借りをする時に決められる利息など金利のコントロールをしているんだ。」
「そんなに大事な数字なんだね!」
「では、実際の最近のモノの価格の動きを見てみよう。世界の中でも特にアメリカではモノの価格が6か月連続で高くなり続けていて、同国政府(労働省)が発表した10月の消費者物価指数(CPI: Consumer Price Index)は前年の同じ月と比べて6.2%(その前の9月と比べて5.4%)と価格上昇は物凄く大きかった。この上昇幅は1990年11月以来の31年ぶりのことだったそうだ。きみにはピンと来ないとは思うけど、6.2%もモノの価格が上がるってとんでもないことなんだけど、これには以下の大きな問題がある。
・原油価格の高騰
・天然ガス価格の高騰
・コロナ禍の反動による人手不足(特に運送と飲食)で労働者賃金の上昇
・モノや物資を運搬するための輸出入用コンテナ不足
・海運船が迅速な入港ができず物資が立ち往生
・世界中で半導体が不足し、自動車や電気・電子機器の供給難で中古市場が活況
コロナ禍までではあまり起こらなかったことが世界中で同時に起こり、モノの供給が不足しているにも関わらず、モノを買いたい需要が大幅に上回り、モノの価格が上がる事態となっているよ。」
「なんか恐ろしいね。これから日本はどうなるの?」
「ガソリン価格は7年以上ぶりの高値で取引されているし、ハウス栽培など燃料を必要とするトマトなどの野菜の価格が上がり続けているし、近々、電気代やガス代も上がる見込みで生活に少しずつ支障ができている。この冬はラニーニャ現象で厳冬になる予想もされていて、特にエネルギー関連の価格が上がる傾向にあるよ。それなのに日本の消費者物価指数は高くはならず低い数値のままなんだ。モノの製造者やサービスの提供者側が価格を上げずいるので儲けが減っている状態と言えるよ。」
「父さん、うちは大丈夫なの?」
「厳しいよ!でも君たちが勉強やクラブ活動に精を出して頑張ってくれると元気になれるから大丈夫!」
「なんか、すごいプレッシャーをかけてくるんだね・・・」
「バレた?(笑)。それはされおき、今、政府は55.7兆円の経済対策を打ち出して、その内容が少しずつ報道されているけど、子どもに関係するものとしては、18才以下の子どもを対象に年内に50,000円の現金、来春までにクーポン50,000万円支給するとの案が与党(自民党と公明党)で固まった。マイナンバーカード新規取得者を対象者に5,000円、更に保険証として連携すれば7,500円、預金口座とも繋げれば7,500円と最大で20,000円の給付がなされるそうだ。」
「えっ!それぼくにももらえるの?!」
「基本的には生活や教育に使う目的で支給されるお金だから、きみのお小遣いにはならないよ!(笑)」
「なんだ、父さんが独り占めするんじゃん!」
「人聞きの悪いことを言わないで!(笑) 冗談はさておき、この給付金をもらえるのは嬉しいけど、日本経済のことを考えると疑問が残るのは事実だよ。昨年の国民ひとり一律10万円給付で、ある民間シンクタンクの調査では90%以上が貯蓄に回った。今回も同じではないだろうか。ただ、異なるのは日本にもジワジワと忍び寄るインフレで仕方なくお金を使うことが増えるため、今回は貯蓄に回らず実生活に回るかも知れないね。また、全額現金ではなく、来春支給予定のクーポンは子育て・養育・教育に用途を限定するらしいので、素直に使われるだろうね。その時には、きみの勉強道具を買ってあげるよ!」
「勉強モノか・・・・・なんか、あまり嬉しくないかも。。。」
「インフレも身近に感じながら引き続きしっかり勉強に励んでね!」