vol.74 住宅価格の上昇が少しは落ち着く?

住宅価格の上昇が少しは落ち着くかも?

政府与党は2022年税制改正を予定し、そのなかのひとつで住宅ローン減税の見直しをほぼ固めた模様。現在の制度では「逆ザヤ」と言われる事象が起きているため、行き過ぎとされた減税規模が縮小される見込みです。

現行制度では、例えば変動金利で住宅ローンを借り入れている場合、平均的な金利は0.6%程度で、減税額を決める条件は以下となっています。

  • 税額控除対象の借入額上限4,000万円(認定住宅は5,000万円)
  • 年末の住宅ローン残高の1%で上限40万円(認定住宅は上限50万円)の税額控除(支払った税金が還付)がされる

単純に金利負担相当額(単利:借入額×金利)を試算すると

4,000万円×0.6%=24万円の支払いに対し40万円の還付となるため、現在は逆ザヤ16万円の利益が出る状態となっています。(但し、年収により還付税額が40万円以下になることもあります。)

これまでは税額控除が10年間で合計400万円(認定住宅は500万円)、ここ2年間の時限措置では合計480万円(認定住宅で合計500万円)と大幅な減税でした。

2022年度からは、

(A)の税額控除対象の借入額上限4,000万円を3,000万円に縮小

(B)の年末の住宅ローン残高の1%を0.7%に縮小で、3,000万円×0.7%=21万円となり、逆ザヤが解消されることになります。

但し、脱炭素など省エネルギーを採り入れた住宅はその環境性能に応じて優遇措置が設けられる予定です。世界中で脱炭素が話題となり、先進国を中心にその取り組みが始まっていますので、日本もその一環として今回の制度改正を実施する模様です。

具体的には以下のカテゴリーにより税額控除の上限合計額が異なります。

  • 認定住宅:元々この認定住宅の適用要件には脱炭素などの省エネルギーだけでなく、バリアフリー、可変性、耐震性、維持管理・保全更新の容易性、劣化対策など厳しい条件のクリアが課せられており、税額控除合計額上限は455万円(新築)、210万円(中古)。
  • ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス):太陽光発電などによるエネルギー消費実質ゼロとなれば、税額控除合計額上限は410万円(新築)、210万円(中古)。
  • 省エネ基準適合:2015年7月に公布された建築物のエネルギー消費性能向上に関する法律をクリアした住宅が対象になり、税額控除額合計上限は364万円(新築)。
  • 上記以外の住宅の税額控除合計額上限は273万円(新築)、140万円(中古)。

(注)税額控除期間は新築住宅で13年間、中古住宅は10年間

もうひとつ厳しくなった条件があり、所得制限が現行の3,000万円以下が2,000万円以下に引き下げられる予定ですので、高額所得者への減税が大きく見直されることとなります。

これらの減税が来年度以降の住宅市場にどのような影響を及ぼすのかは現時点では不明ですが、これまでは逆ザヤ特権など大きな減税効果を前面に出しマーケティングされていた住宅・不動産市場にとっては逆風になるかも知れません。しかし、これまでの超低金利及び逆ザヤがvol.71でもお伝えしたように、買い易さが住宅バブルを生み育んできたことも事実です。年収400万円でも変動金利0.6%で35年の住宅ローンを組めば年収の10倍にあたる4,000万円の住宅も買えてしまいますし、最近は夫婦共働きでパワーカップルと言われる世帯年収が裕に1,200万円を超える人たちには8,000万円~1億円の物件にも手が出せてきました。

過去に日本が経験したインフレ・高金利時に起こった資産バブルで高所得者が高額物件を購入できた時代とは異なり、超低金利・デフレ下で起きている現在の資産バブルは低所得者層でも高額な物件が買えてしまい、大半の住宅ローンが変動金利で組まれている状況下において、日本にも忍び寄るインフレが更に深刻になり金利上昇が起こった時を想像すると怖くて仕方がありません。

日頃から住宅ローン相談を相当数おうけしている私個人としては、今回の税制改正が鎮静剤となり、住宅価格高騰傾向が少しでも落ち着くことを願っています。

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