vol.12 教育資金贈与の非課税

知らないと損する!? もっと親とコミュニケーションをとろう!

日本の個人金融資産は約1,860兆円もあり、ご両親やご祖父母の世代60才以上の方々が全体の約2/3を保有している現状に日本政府は目をつけ、基礎控除の金額を引き下げて相続税を多く取ろうとしているお話は前号(vol.11)で少し触れました。 

しかしながら、生活費と教育資金に関しては日本政府も目をつぶっています。特にこの2つに関しては、都度贈与されても原則非課税なのです。(これとは別に、資金使途は関係なく贈与基礎控除110万円があることも前号でも触れました。)

更に、教育資金を必要とする人や(前号でお話しした)住宅を買う人に一定金額の非課税の贈与(お金をあげること)を特例として認めています。

「直系尊属から教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税制度」と言います。2021年(令和3年)3月31日までの特例(2013年4月1日から始まった制度)で、お子様などがご祖父母などからもらったお金を教育資金にあてるのであれば、1,500万円まで非課税となります。この制度を利用せず1,500万円(110万円の基礎控除後)を贈与すると、受贈者が20才以上なら410万円、20才未満なら500万円の贈与税が課せられますので、節税効果は大変大きいです。

受贈者(もらえる人)の要件

ア.直系卑属(孫など)であること(ご祖父母などを直系尊属と言います。)

イ.贈与を受けた年の合計所得が1,000万円以下(勤労学生などの場合)

但し、この特例は一度に多くの教育資金を受けることができる反面、少し面倒なルールもありますので注意が必要です。(過去にこの制度を利用された方も必読です。)

 注意点

  • 贈与者(お金をくれた人)が教育資金贈与をしてから3年以内に亡くなられた場合には、その時点で使われていない残金は、贈与者の相続財産として戻されて課税されます。但し、贈与者が亡くなられた時に受贈者が23才未満であれば、このルールは適用されません。(仮に19才以下の孫などに贈与したのであれば、3年経過しても22才なので問題ありません。また、2019年3月31日までにこの制度を利用した贈与は対象外です。)
  • 2019年(令和元年)7月1日以降は、受贈者が23才以上の場合、塾・習い事や教習所の費用は教育資金としては使えなくなり贈与課税されてしまいます。
  • 2019年(令和元年)7月1日以降は、受贈者が30才以上でも学校に在学中、あるいは教育訓練給付金の対象*となる教育訓練を受講していれば問題はありませんが、6月30日までに30才になる受贈者は、それまでに使い切れなかった残額は贈与課税されてしまいます。
    *教育訓練給付金の対象詳細は以下HPをご覧ください。
    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/jinzaikaihatsu/kyouiku.html
  • 信託銀行・銀行など金融機関にて教育資金贈与信託等を契約する必要があり、教育資金として使用された証として領収書などを提出する義務があります。また、税務署への贈与の届出も必要です。

 前号でも述べましたように、ご両親やご祖父母が何もせず天寿を全うされると相続税を沢山とられてしまいます。この年代の方々で長年サラリーマンとして勤労された方々が受給できる生涯年金額は生活には支障もなく、持家で資産も潤沢な方が多い世代です。決して、親のお金を当てにするのではなく、将来、親の介護が必要になる可能性や病気に罹患するなどのリスクも含めた話し合いがもっと必要だと考えています。

 私自身はこの言葉は好きではありませんが、「長生きリスク」や「認知症」の話題が後を絶ちません。現に、私の父もアルツハイマー型認知症でした。我が家は元々家族愛が強く家族間のコミュニケーションはよくとれていた方だと自負していますが、核家族化しているからこそ、もっとコミュニケーションをとるべきだと思っています。

お金が全てではありませんが、教育資金を通して家族間のコミュニケーションを更にとれると、パパ・ママにとってはご両親、子どもにとってはおじいちゃん・おばぁちゃんからの愛情も更に深く感じられて、ご家族の絆がもっともっと深まります。

今回も「子どもとお金」の話題のひとつとして、お読みいただけたら幸いです。

日頃の業務では東京・神奈川を中心としたご家族が多く、ある程度の余裕資金のある方々からのご相談をさせていただいた経験から、贈与の非課税の特例をお話ししました。

次回は、幼児教育・保育無償化の話をしたいと思います。

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