vol.71 住宅ローン控除も大切だけど
あとひと月で期限?!それよりも不動産バブルに注意!
今年もしくは10年以内に住宅を買われた方には住宅ローンを借りている銀行から住宅ローン年末残高証明書「住宅取得資金に係る借入金の年末残高証明書」が郵送されます。前号でお話しした生命保険料控除は所得控除(一定額所得がなかったことと見做され支払った税金が戻ります。)ですが、住宅ローン控除は税額控除(支払った税金が一定額戻ります。)の対象です。年末調整か確定申告で使用する大切な書類ですのでこれらの郵便物には必ず目を通して内容を確認してください。なお、住宅ローン控除の内容詳細についてはvol.57をご参照ください。
昨年末で終了するはずだった通常の税額控除期間10年間が13年間受けられる時限措置が今年いっぱい延長され、注文住宅の方は時すでに遅く期限は9月末で終えましたが、分譲住宅、マンションの方は新築も中古(売主が業者の場合)も11月末までに契約し、来年中に住めば13年間の税額控除が適用されます。
これは大変お得な制度なので利用したいと思う方も多いとは思いますが、日頃の業務で大変気になることがあります。それは不動産価格が年々上がり続け、特にマンション価格は新築も中古も異常な価格上昇があるように思えます。過去10年間の住宅資金相談を振り返ると価格は1.5倍程度、肌感覚ですが上昇しているように感じます。
そこで、国土交通省が算出している不動産価格指数(住宅)のデータを検証してみましたところ、私の肌感覚は間違っていませんでした。
このデータは2008年4月から記録され、2010年度の平均を100%とし、その後の増減を示しています。対象になった不動産物件数は少ない年で9,300世帯弱、多い年で20,000世帯を超えます。2009年1月に総合住宅(住宅地、戸建住宅、マンション)の指数は100.0でその後、変動は増減を繰り返しますが、少しずつ価格は上昇し続けているのがわかります。
リーマンショック以降、景気が大きく低迷し、政府及び日銀は金融緩和を強めていきます。世の中に低い金利でたくさんのお金を供給し景気を回復させようとしてきたのは皆さんも周知の事実です。2016年2月、日銀は著名なエコノミストも誰もが予想し得なかったマイナス金利政策に大きく舵を切ります。当時は、日銀総裁黒田氏(現職)の名前をとって「黒田バズーカ」とも称され、金融マーケットだけでなく、不動産マーケットにも多大な影響を与えました。2016年2月には前月比▲1.4%で104.8だった不動産指数の総合住宅は翌月3月には+1.4%で106.3に上昇し、それから5年4か月を経て、2021年6月(執筆時点で最新の数値)は121.2にまで上昇しています。マンションに至っては2016年2月に126.2が165.8と大幅に上昇していることがわかります。2010年から比較すると1.65倍になる計算です。
コロナ禍で在宅勤務も増え、自宅の住み替えを希望する方が多く、不動産購入の需要は更に高まり需給バランスが崩れているのは事実です。日銀が長く続けた超金融緩和により住宅ローン金利は低く、低所得でも不動産購入がし易くなった反動が、いわゆる不動産バブルを起こしています。異常なほどに上昇している不動産価格を横目に、世の中の物価上昇率が2%に達していないから超金融緩和を継続すると言い続けるこのままで日本は本当に大丈夫なのでしょうか。過去に日本が経験したインフレ下に起こった不動産バブルとは異なり、デフレ下で起こっている今回の不動産バブルに国民が異議を唱える時が来ているではないでしょうか。