vol.66 子どもにもわかる銀行の役割
これから銀行はどうなるの?
三男は言い続けます。
「ぼくがお金を預けている銀行(支店)がなくなってしまうと困るな。」
「もし支店がなくなってもATM(現金自動預け払い機)は使えるように、その銀行のあった場所や近所に残すはずだからお金の出し入れには困らないと思うよ。ただ、人口が少ない町や村だと提携コンビニのATMを有料で出し入れすることになる可能性は残るかもしれないね。」
「そんなことになる前にお金を全部おろそうかな。」
「そうする人も増えるかも知れないね。では、きみが心配な銀行のこれからの役割について話を続けるね。」
「世の中のモノとお金の動きをケイザイ(経済)と言い、その橋渡し役であるお金は時代の流れとともに変化しつつあるんだ。2019年10月から、モノを買った時に支払う消費税が8%から10%(食品など一部は8%のまま)に上がった時にあわせて特典がもらえるキャッシュレス・ポイント還元事業(マイナポイント)も始まったんだ。これに伴い、現金を使わないキャッシュレス化は少しずつ進み、2020年度には29.7%(経済産業省)となったよ。お隣の韓国ではすでに96.4%、中国60%、シンガポール58.8%だから、これらと比べると日本はまだまだ大幅な遅れをとっているね。飲食店などお店(事業者)側の受け入れ体制は増えつつあるものの、お金を使う(消費者)人たちの意識を変えるにはもう少し時間がかかりそうなんだ。
きみも知っているように、コロナ禍だから現金に触れずにできる非接触決済は最適な手段だけど、スマホの操作がめんどうだから使わないとの声も耳にするよ。父さんのキャッシュレス比率は恐らく90%以上で、お店側が現金オンリーでない限りキャッシュレス決済を利用している。QRコード、クレジットカードなどを使うとね、還元と言って使ったお金の数%がポイントとして戻る特典があって、還元率の高いキャッシュレスを使い分けてポイントを増やしているんだ。(笑)」
「父さん、しっかりものだね!」
「せっかくもらえるシステムだから利用しない手はないよ!」
「ここからは少し難しい話をするよ。更に、世界に目を向けると、今やSNSの存在が脅威となりつつあり、例えばフェイスブックではその利用者同士で決済可能なお金(リブラ)の創出を企んでてね。これを受けアメリカ政府並びに中央銀行の役割を果たすFRB(連邦準備理事会)は、慌てて火消しに必死なんだ。日本の人口約1.2億人に対し、13億人の利用者がいるフェイスブックが企業・個人を問わず資金決済ができてしまえば、アメリカ政府が定めるお金(法定通貨)ドルの存在意義は消滅し、やがては経済動向を監督する手段のひとつである金融調節機能が消滅する危機となる可能性がある。一個人が創設した企業が一国の法定通貨だけでなく、果てには世界中の法定通貨の秩序も乱すことになりかねない。これはアメリカだけのことではなく日本も含めて全世界において注視すべき事なのだよ。」
「ほうていつうか・・・きんゆうちょうせつ・・・なにそれ、難しすぎる。。。」
「ものすごく簡単に説明すると、日本なら円、アメリカならドル、中国なら人民元とか、その国がその価値を保証しているお金のことを法定通貨と言うんだよ。また世の中で使われるお金の量や貸し借りの際に使われる利息(金利)の高さ・低さを管理して操ることを金融調節と言うんだ。」
「へ~、なるほど、なんとなくわかった!」
「一方、企業だけではなく世界の国々に目を向けると、中国を先頭に法定通貨のデジタル化に力が注がれているんだ。中国では実際に使う準備(実証実験)が進み、人民元のデジタル化が間もなく実行されるようになる。そうなると、やがては世界中でデジタル人民元が使われるようになり、その取扱量(額)が増えると、今あるアメリカドルのように輸出入をする際に必要なお金の決済を為替取引せずに決済されるかもしれない。こうなると、為替取引を間に入り外国通貨と自国通貨を交換する役割を果たしていた銀行の仕事はなくなるわけさ。」
「難しい話だったけど、銀行の役割がますます減るのはわかったよ。」
「子どもでも世の中のことを理解して、これからの未来にどう生き抜くべきかを考える習慣をつけることが大事だよ。」