vol.52 大人の為替知識 その1
子どもに質問されたらどうする? 知識を習得して子どもからの質問に備えよう!
我が家のアイドル三男から突然投げかけられた質問(vol.50)から始まった為替のお話しの続きです。
為替は大別すると4つの要因で変動します。
- モノの売買(受給)バランス
- 当該国の経済動向(拡大・縮小、対外黒字・赤字など)の強弱評価
- 地理的・政治的要因(資本主義国・社会主義国・中東・新興国などの首脳による発言)
- 中央銀行の金融政策(金利差)
(1.2.はvol.51で説明済)
3. 地理的・政治的要因
為替の歴史を見てみましょう。
(ここでは詳細説明は割愛しますので、ご興味のある方はご自身で検索してみてくださいね!)
1944年 ブレトンウッズ協定:金1オンス(約31グラム)を35ドルで固定
1945年 第二次世界大戦終結 軍用交換レート1ドル=15円
1947年 急激なインフレで1ドル=50円
1948年 インフレが加速し1ドル=270円
1949年 固定相場制の開始1ドル=360円
1971年 ニクソンショック スミソニアン協定合意:円の大幅な切り上げ合意(円高に):ブレトンウッズ体制崩壊、1ドル=308円
1973年 スミソニアン協定解消で変動相場制に移行し、1ドル=260円台
1973年 第一次オイルショック(第4次中東戦争)でインフレに 1ドル=300円
景気後退とインフレによるスタグフレーションに陥り、継続的な金融緩和(現在と同様に政策金利を引き下げ続け)で1ドル=200~250円で推移
1979年 第二次オイルショック(イラン革命)で原油価格が1バレル13ドル⇒34ドルに暴騰し、世界的にインフレが起こり世界同時不況へ突入 1ドル=220円
1985年 プラザ合意:アメリカNYのプラザホテルでG5:米、仏、西独、英、日で会議アメリカの強い要望(レーガン大統領の強い要望でドル安誘導へ)に合意
1986年 プラザ合意実行 国際協調利下げにより、1ドル=250円⇒160円の急激な円高
1987年 ルーブル合意 プラザ合意による急激なドル安の修正に合意 1ドル=153円程度で安定及び為替協調介入実施するもドル安は止まらず、10月のブラックマンデー(アメリカの財政と国際収支の双子の赤字懸念)でNY株式市場大暴落
筆者が証券会社に入社した年でこの大暴落は今でも記憶は鮮明にあります。
1988年 ドル売りが続き1ドル=120円台
1989年 内需拡大政策による景気拡大(特に不動産)で年末に日経平均株価市場最高値38,915円を記録
1990年 不動産バブル抑制のため不動産総量規制発令(旧大蔵省)1ドル=160円
不動産価格及び株価の下落開始
1994年 バブル景気はじけるも1ドル=100円
1995年 阪神・淡路大震災 1ドル=79円75銭の史上最高値を記録
1997年 アジア(タイ、インドネシア、韓国)通貨危機 山一証券、北海道拓殖銀行、日本債券信用銀行が相次ぎ破綻 1ドル=140円
1998年 ロシア通貨危機 1ドル130円~140円
1999年 ユーロ通貨誕生 ブラジル通貨危機 1ドル=100~130円
2008年 リーマンショック 米大手金融機関破綻 1ドル106円~90円
2011年 東日本大震災 G7円売り為替協調介入、日本単独為替介入実施 1ドル=75円54銭(史上最高値記録)
2012年 第二次安部政権発足 1ドル=85円
2013年 アベノミクス始動 量的質的(異次元)金融緩和実施 1ドル=85円~105円
2016年 異次元金融緩和政策(マイナス金利)実施 1ドル=125円
2019年 トランプ大統領の意向で米中貿易戦争勃発 1ドル=115円~109円
2020年 新型コロナ パンデミック 1ドル=113円~103円
2021年 新型コロナ変異種発生 1ドル=102円台
ご覧のように、為替は地理的・政治的要因で変動します。
今回はあくまで米ドル・円での動きを説明しましたが、世界各国の通貨も同様に影響を受け変動しています。
これらの変動は各国の中央銀行による金融政策の影響もうけるのですが、日本銀行は2016年1月28~29日開催の金融政策決定会合で先進国の先頭を切って異次元と言われる金融緩和政策(マイナス金利政策)を決定し、特に輸出企業にとって有利になるよう為替(円安)を意識した金融政策を採っています。
世の中のお金は経済活動が強まる国へ、金利の低い通貨から高い通貨に、また適度(年率2%増)なインフレが起きる方へと流れるのがセオリーで、取引国との金利差が為替を動かす大きな要因となります。上述の太字は日銀が過去に実施した金融政策です。
これらの動きを知ればあなたも為替のことが少しずつ見えてきます。
次回は4.中央銀行の金融政策(金利差)につきお話しします。