vol.15 子どもに迷惑をかけない老後を過ごすために その2
人生100年時代の到来。子どもに迷惑をかけない老後を過ごすために その2
前号vol.14に続き、老後資金の準備の仕方のお話をします。
2018年12月に発表された厚生労働省年金局の調査:2017年(平成29年)度厚生年金保険・国民年金事業の概況で、およその年収:1人当たり標準報酬額(総報酬ベース・年額)を男性が503万円・女性が331.3万円と算出し、その平均受給年金額を以下のように試算しています。
将来の物価変動は予測できませんが、この平均的な年収と受給年金額の関係が維持されると仮定し、ご自身の年収と世帯の種類から、ある程度の予想がつきます。
先般、金融庁が発表した実支出の26.3万円。住居が持ち家か賃貸かでは大きく異なり(ここでは別問題とします)ますが、子どもの養育・教育を終え、そんなに必要でしょうか。(vol.14参照)
そもそも論、年金システムについての問題点は多々ありますが、ここでは割愛し、老後資金の準備の仕方にフォーカスします。
老後資金につき、何故、金融庁が腰を上げたのでしょう。ニュースや新聞などでも、投資をさせたい意図があるのではとのコメントをたくさん見かけました。
私もそう思います。(笑)
国をあげて個人金融資産1,850兆円のうち約半分の現預金を、特に株式型投資信託への投資を誘致し、日本の株価を支えるべく大資金移動を目論んでいると思ってしまいます。
しかし!投資をすることは簡単ではありません!
長期投資で、ほうったらかし!なんてもってのほかです。
では、どうすれば良いのでしょう。
国民年金の方
国民年金基金とiDeCoを検討しましょう。
国民年金基金(公的年金)
会社員や公務員との年金額の差を埋めるために創設された公的年金制度(1991年・平成3年創設)です。国民年金の2階部分として創設され、あくまで任意加入です。
・運用指示の必要はありません。
・保険料は全額が社会保険料控除の対象ですので、減税(所得税・住民税)になります。
・基本的に終身年金です。これは妙味が大きいです。
保険料は厚生年金のように収入に対する一定率ではなく、ご自身の判断で金額を決めることが可能(上限月68,000円:iDeCoとの合計)です。
また、加入後、保険料の増減も可能ですので収入の増減に合わせられます。 詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。https://www.npfa.or.jp/system/about.html
厚生年金の方も国民年金の方もiDeCoを検討しましょう。
iDeCo(私的年金)
会社で厚生年金の上階、いわゆる3階に企業年金がある方でも、自営業や主婦(会社員・公務員などの配偶者)でも加入できます。 企業年金がある会社員の年金受給額は上述より相当額増え、iDeCoで更に増えます。
ここで大切なこと!
・iDeCoはご自身で運用指示をしなくてはいけません。
・その運用成績により将来の受取額が異なります。
そこで!
運用に慣れるまで、自信がつくまで、また市場金利が相当上がるまではiDeCo内の定期預金に全額入れて下さい。
えっ?定期預金?利息はあまり付かないのでは?
はい、その通りです。しかし、このiDeCoは所得控除の対象です。
年収400万円(基礎控除のみ)を例に見てみましょう。
iDeCoに加入しない場合
支払う税金合計は26.57万円(所得税8.72万円と住民税17.85万円)
iDeCoに加入(会社に企業年金が無く年間27.6万円:月2.3万円)した場合
支払う税金合計は23.23万円(所得税7.60万円と住民税15.63万円)に下がり、▲3.34万円もお得に(減税)なります。
現在の超低金利環境では銀行預金をしても利息はほとんどありません。ネット銀行の定期預金金利でも良くて0.3%です。(大手銀行では0.01%:2019.7執筆現在)
しかも利息には20.315%の源泉徴収税がかかるので実質利回りは約0.239%です。
iDeCoでは年27.6万円の加入で3.34万円の節税効果がありますので、これだけでも年利回り(単利)はなんと12.1%もあります!
まだ当面、定期預金金利は期待できませんが、将来、金利が上がれば利回りは更に上がります。
30年間加入すれば、利息が付かなくとも828万円貯まります。
その減税メリットは3.34万円×30年=100.2万円もあります。
iDeCoの運用益は非課税なので銀行預金の利息ように源泉徴収課税されませんし、定期預金であれば運用指示の必要もありません!
但し、会社の年金により、毎月の掛け金額に上限があります。
いくらでも掛けられる訳ではないですが、少しでも減税ができれば、長年続く超低金利環境下においては、大変大きな魅力です。
運用に強い方は減税と運用益非課税のメリットを最大限に生かせますし、運用は怖い、興味がない方でも安心して始められますね。
節税(減税)意識を持つ方は少ないかも知れませんが、この制度を利用すれば、キリギリスではなく、アリのようにコツコツと確実に貯めることが可能です。
開始する年令によっては将来の不足分を完全に補えないかもしれませんが、何もしないよりは断然に良いです。
但し、以下3つの注意事項があります。
・60才まで掛金を降ろせません。(開始した年齢により異なります)
・受取時は年金(公的年金控除)か一時金(退職所得控除)の対象になります。
・公的年金のように終身年金ではなく一定期間(5~20年)の受給です。
次回もこのお話は続きます。