vol.14 子どもに迷惑をかけない老後を過ごすために その1
人生100年時代の到来。子どもに迷惑をかけない老後を過ごすために その1
6月初旬から中旬にかけて世間を賑わせた年金問題。金融庁が作成した資料で、老後に2,000万円も不足するとの発表に非難が飛び交いました。果たして、金融庁の発表は「不安をあおるもの」だけのものだったのでしょうか。
新聞やニュースでは「不安」をあおる見出しが多かった気がします。その年金の歴史を振り返ると、国民皆年金体制は戦後に開始されたものであり、平均寿命も男性65才程度、女性70才程度と今のそれに比べて短い時代の1961年(昭和36年)ですから、たかだか60年にも満たない訳です。高度経済成長期やベビーブーム、そして特にバブル好景気には市場金利も高く年金運用益は高く安定し、将来の見通しが万端でした。
時は流れ、1990年初頭のバブル崩壊、2004年グリーンピアを中心とした年金福祉還元事業の経営悪化による大損失、2008年のリーマンショックなどが重なり、年金の運用実績は悪化の一途を辿り、年金の有り方が大きく問われる事態となりました。
更に平均寿命は年々伸び、現在男性は81才を、女性は87才を超えるまでになり、男性の約1/4、女性の約1/2が90才まで生きる時代となりました。
失われた20年と言われる昨今の市場金利は超低空飛行を続け、年金(運用面・給付面共に)には大変厳しい環境が続いているのも事実です。
そんな事態をも乗り越えるには、いったい、どうすれば良いのでしょう。
今回から、老後資金の準備の仕方についてお話ししたいと思います。
将来いくらもらえるのか。
年金制度の理解を深め、ひとつひとつ検証していきたいと思います。
年金の仕組み
年金は2階建てと言われています。
下の図のように1階は国民年金(基礎年金)、2階は厚生年金です。
日本に住んでいれば20才以上60才未満の全ての人が加入しなければなりません。
国民年金:自営業・学生・無職の方。
この階にいる方々を第1号被保険者と言います。
厚生年金:会社員・公務員など何らかの組織で勤務する方。
この階にいる方々を第2号被保険者と言います。
専業主婦(主夫)などは配偶者が会社や組織に勤めていれば厚生年金保険料を支払わなくても国民年金に加入していることになります。
この階にいる方々を第3号被保険者と言います。
ところが、国民年金であれば、配偶者も国民年金保険料を支払う必要があります。
会社勤めの方の配偶者は大変お得ですね。
保険料:国民年金の月保険料は収入に関係なく一律16,410円(2019年度)で、年額約19.7万円です。収入に変動があり、支払いが困難な場合には届け出れば全額免除や一部免除の制度もあります。
厚生年金の月保険料は給与額(基本給・残業手当・通勤手当などを含めた税引き前の給与額を指し標準報酬月額と言います)の18.3%で、会社が半分の9.15%を負担してくれます。給与額を一定の幅で等級区分され(1等級~31等級)決められています。等級区分される際の標準報酬月額は下限8.8万円で上限は62万円となっています。
これを見て、どう思われますか?
国民年金は保険料が一律なので、収入が多い時には手取りが増えます。
厚生年金は収入が多くなれば、保険料は上がり負担が増えます。ではここで、話題になった金融庁作成の資料で使用された収支図を見てみましょう。
実収入は209,198円とありますが、その内訳を見ると勤め先の収入・事業収入・その他収入も含まれています。恐らく、会社を退職された方には年金以外の収入はほぼ無いのが一般的だと思いますので、受給年金額191,880円だけを見てみましょう。しかし、この数字も少しわかりにくく、どれくらいの給与(収入)水準の方の平均かが不明です。
更に、最近の若い世代は共働きの方が大変多く、また、単身、夫婦(どちらかのみ就業)、夫婦(共に就業)及び自営業か会社員かにより異なりますので、年金の収入額の例をそれぞれ具体的に次号でお話ししたいと思います。